ヒュムネクロニクル第6回目!「RE=NATION」「月奏」について
こんにちは、土屋です。ヒュムノスに関する開発秘話やエピソードなどを皆さんにお届けするコーナー、ヒュムネクロニクル。
今回で5回目。今回は「RE=NATION」と「月奏」についての、製作苦労話などをしていきたいと思います。歌い手さんには、霜月はるかさんにインタビューをさせていただきました。
【今週のテーマ1:『RE=NATION』】
ヒュムノスの中でも少し異色な、透き通ったメインメロディが一本通っていて、研ぎ澄まされた感覚のある曲、リネイション。この曲はサスペンドと対になるように創られた曲で、効果も完全に対照的な形。サスペンドが自己犠牲の曲ならば、リネイションは再生の曲です。
この曲は、アルトネⅠでは珍しい、かなりしっかり画面と同期を取っている作品です。具体的に言えば、途中で一旦無音になる所があり、その後大盛り上がりが来るのですが、そのタイミングが再生の瞬間、すなわち塔の再起動にぶつかるように作られています。実際にプレイされた方からも、演出との同期で鳥肌立った、という感想なども頂きまして、この時に音と映像との同期というものが如何に人のこころを掴むものなのか、改めて再認識する事になりました。
同じものとしてはクロニクルキーもそれにあたり、やはり映像とセリフと曲が完全にマッチングしたとき、大きな感動を呼び起こすというものはあるのだと思います。
アルトネリコという作品を作り始めたとき、「音楽を聴けば絶対にみんな良いと思ってくれる」と信じていました。ですがその時同時に、映像やその時のテンションなどによっては、曲が台無しになってしまうという危機感も抱いていました。特にリネイションやクロニクルキーのような曲は、それが顕著に出てきます。それ故に、音と映像の同期にはこの2曲を中心に、かなり力を入れてやらせていただきました。Ⅱでは更に突っ込んだことをやっていますので、是非プレイして、音と映像の同期が呼び起こす感動を、更に感じて欲しいと思っています。
曲に関しては、サスペンドがかなり複雑な曲であるのに対し、リネイションはかなりシンプル。これも、この2つの曲を対照的に見せている1つの要因でしょう。この曲から、再生への一筋のまっすぐな想いを感じ取ってもらえたら、設定した者としてこの上なく嬉しく思います。
【今週のテーマ2:『月奏』】
CDのボーナストラックとして収録している「月奏」。ヒュムノスコンサート蒼の「星詠」もそうですが、このボーナストラックは、アルトネリコのテーマである「詩」を讃える詩として設定しています。この月奏は、アルトネリコの世界観の中でももっと古い歴史を持つ存在である、月奏というシャーマンのイメージで制作しています。ちょっと和風な、そして儀式っぽい感じの曲に仕上がっていますが、それは月奏というものが古風なイメージを持っており、それを表現するためのアレンジになっている為です。「星詠」も「月奏」も、詩のテーマは同じですが、ゲーム内設定のそれぞれの存在していた時期(月奏は有史以前、星詠は第三紀)をイメージの中に入れて創っていただいています。
またこの曲は、声を楽器的なイメージで使うという実験的な事をした最初の曲だったかと思います。この曲では、多重コーラスを雅楽の「笙」という楽器に見立てて歌っています。このように、ボーカルやコーラスを楽曲と融和させる試み、楽器とボーカルの垣根を取り去る試みは、アルトネリコならではなのではないかと思っています。