表紙
この度は「む茶ぶりカレンダー」をお買い上げ頂き、本当にありがとうございます。
このカレンダーは、皆さまが楽しめるものを創りたい、という気持ちで2008年の夏頃から計画していたものです。
アルトネリコ単体では初となる今回のカレンダー。カレンダーといえばキャラ絵などになりがちですが、今回は敢えてそこから外しています。
コンセプトは「アルトネファンが喜ぶもの」。何という漠然なコンセプトでしょうか。そしてプロジェクトメンバーで議論を交わし、少しずつ構想を固めていったのです。
「やっぱり描き下ろしイラストでしょ!」
「人気キャラのエピソードとか楽しめるよね!」
「読み応えならマンガマンガ!」
「アルトネなら楽譜でしょ!」
「設定資料の詳しいのとか、みんな興味持ってくれると思うけど…(約1名)」
などなど様々な意見が飛び交うこと数時間。とある人が冷静に言いました。
「でも、これってカレンダーのネタじゃないよね」…。少しの間、場が静かになります。ですが、そこはアルトネリコ。
「なに言ってるの。全部採用に決まってるじゃん」
「…は?」「え?」
価値のあるものを創りたい。だからこそ、新しいものをたくさん盛り込みました。毎月めくる度に出てくるのは、どれもこれも全部、何かが「新しいもの」です。買ってくれた皆さんが、毎月めくるのを楽しみにしてもらえたなら、このカレンダーを作った甲斐があったというものです。
文字通り、関係スタッフに「む茶ぶり」しまくって創りあげたこの作品。大きな絵を描き下ろしてくれた凪良さん、突然短編小説を振ってしまった富松君、嬉々として漫画を描いてくれた辻󠄀田さん、膨大な楽譜を作ってくれた中河さん、そして、編纂、途方もない着せ替えデザインを延々作ってくれた山岸さん、広報の佐藤さん西澤君、本当にありがとうございました。
そして興味を持ってくれた皆さん、買ってくれた皆さん、笑ってくれた皆さん、大切にしてくれる皆さん…皆さんがいてくれるからアルトネリコはいつまでもこうしてバカな事をやっていられるのかもしれません。
心から感謝の気持ちをお伝えします。本当に、本当にありがとうございます。2009年も一年間どうぞよろしくお願い申し上げます。
アルトネリコシリーズ ディレクター
株式会社ガスト 土屋 暁
上級波動科学講座
四次正角性中核環の特性とその効果
〜メタファリカ創成プロジェクトをモデルケースとした具体事例による解析〜
The characteristic and the effect of fourth-dimension's equilateral triangle kernel.
~Analysis by concrete case of made model case project named Metafalica. ~
詩魔法サーバー
ソル・シエールに存在する塔「アルトネリコ」と、メタ・ファルスに存在する「インフェル・ピラ」は両方とも「詩魔法サーバー」と言われるものである。その定義は、以下のようなものによる。
- 想い(導体H波)を魔法の力(導体D波)に変換するシステムを持つ
- レーヴァテイルが1人以上接続されている
- ヒュムノス言語をサポートしている
システム「アルトネリコ」は、第一紀と呼ばれる文明期に建てられた塔である。全てのレーヴァテイルは、このアルトネリコの中に「心」があり、詩を謳えば塔が魔法にしてくれた。塔は魔法を創り出す為のエネルギー(導体D波)を無限に保有してはいるが、それを何かの形にしたり、実質的な力にする為の思考は持ち合わせていない。それを行うのが、レーヴァテイルなのである。
アルトネリコとインフェルピラ
アルトネリコ(塔)とインフェル・ピラを分かりやすく例えれば、WindowsマシンとMacである。
サーバー名 | 例えるなら | 設置場所 | 舞台 |
アルトネリコ | Windowsパソコン | ソル・シエール | アルトネリコⅠの舞台 |
インフェル・ピラ | Macintoshパソコン | メタ・ファルス | アルトネリコⅡの舞台 |
両者は、基本的な処理理論は同じである。PCでいうなら、プログラム言語がCPU等を動かして結果をはじき出す、というプロセスは同じという事である。しかしWindowsとMacでは、根本的にCPUが違い、それに対応する言語も違う。
それは、ヒュムノス言語の「新約パスタリエ(インフェル・ピラ用)」とそれ以外(アルトネリコ用)の差として説明できる。また、レーヴァテイルはSDカードである事に変わりなく、厳密にハードウェアレベルでいえば、第三世代もI.P.D.も何の変わりもない。何が違うのかと言えば、生まれたときに「Windows用にフォーマットされたか、Mac用にフォーマットされたか」でしかない。
サーバー名 | アルトネリコ | インフェル・ピラ |
PCに例えると | PC/AT互換機(Windows) | Macintosh(PPC) |
使用言語 | 中央正純律他数種(インテル系アセンブリ) | 新約パスタリエのみ(モトローラ系アセンブリ) |
対応拡張子 | EXEC_XXXXX/. | METHOD_XXXXX/. |
レーヴァテイル | Alphaフォーマットされたメモリカード(NTFS) | I.P.D.フォーマットされたメモリカード(Macフォーマット) |
これら二つは、普通繋ぐことが出来ない。繋ぐためには、物理結線を行った後に、互換プロトコルを用いてデータのやりとりを行う必要がある。簡単に言えば、例えばLANで接続をする。すると、データの閲覧やストレージ(コスモスフィア、バイナリ野)の更新は相互に出来るようになる。
ヒュムノス-E(エクストラクト)
ヒュムノス・エクストラクトは、詩魔法サーバーを制御するための重要な詩であり、この世界で最も大切にされている詩群の事である。本章はヒュムノス・エクストラクトの発動仕様について説明する。
ヒュムノス・エクストラクトの理論
ここからは、ヒュムノスのそれぞれについて、より深くロジックを解説していこう。
ヒュムノスには「ヒュムノス・エクストラクト」「ヒュムノス・ワード」「ヒュムノス・スペル」が存在する。「ヒュムノス・スペル」はレーヴァテイルの詩ではない為特殊であるが、「ヒュムノス・エクストラクト」と「ヒュムノス・ワード」は、一見同じ理屈で動いているように見える。
それは、端から見ればどちらも「詩を謳う→何かが発動する」という事に違いがないためである。しかし、実際は全然違う。簡単に言えば、ヒュムノス・ワードとは100%レーヴァテイルの妄想の具現化であり、ヒュムノス・エクストラクトとは、よりメカ的でシステム的な、無機的部分が多く含まれる詩である。ヒュムノスの理論に詳しい方はピンと来るかも知れないが、ヒュムノス・エクストラクトは純粋なレーヴァテイルの想いではない。そこには「想い(導体H波)」を信号としてしか見ない類の、明らかなる「人工的な処理」が介在する。
▼ヒュムノスの実行結果例詩名称 | 詩種別 | 効果 | 実行範囲 |
EXEC_PAJA/. | エクストラクト | 塔内の特定回線を切断 | 塔システム内 |
EXEC_SUSPEND/. | エクストラクト | 塔全体をスタンバイに移行 | 塔システム内 |
EXEC_LINCA/. | エクストラクト | 塔とレーヴァテイルを物理結線 | 塔システム内 |
EXEC_HYMME_ LIFE=W:R:S/. |
ワード | 特定有機体の定常D波の秩序補正 | 詠唱個人視野内 |
EXEC_HYMME_ LUMINOUS=DEF/. |
ワード | 特定フィールドにD波シールド | 詠唱個人視野内 |
EXEC_HYMME_OYAJI/. | ワード | 頑固親父のビジョン創出とD波ダメージ | 詠唱個人視野内 |
しかし、レーヴァテイルが詩を謳う(=導体H波を放出する)為には、自分の精神の中に 完全に納得した形でその「詩」を落とし込まなければならない。ヒュムノス・ワードは、自分自身が想い描いた詩を自分に落とし込むのだから、100%成功して当然である。
(ところがワードであっても、レーヴァテイル自身に自己不安があると、なかなか詩が思い通りの効果を発揮しない)。
ヒュムノス・エクストラクトの最も難しい点はここで、設計されたヒュムノス・エクストラクトの想いを、レーヴァテイルが何の違和感もなくダウンロード(心に落とし込むこと)出来なければならない。自分以外の誰かの「想い」を、あたかも自分の「想い」として擬似的に吸収しなければならないのであるから、その互換性は相当シビアになってくる。
それ故ヒュムノス・エクストラクトには、ショックアブソーバーとして、その挙動に近い種の「物語」が封入されていることが多い。それは、レーヴァテイルと人工的プログラムを馴染ませるための手段として、しばしば用いられる。ヒュムノスエクストラクト制作時に、ここに矛盾が発生すると、レーヴァテイルはダウンロードを拒絶するか、もしくはダウンロード出来ても力が出ない。
ヒュムノス・エクストラクトの仕組み
EXEC_PAJA/.などは、歌い手の「想い(導体H波)」が塔のシステムを動かす詩である。厳密には、ヒュムノスという詩をダウンロード(心に記憶)したレーヴァテイル(娘)が謳う。その時のレーヴァテイルは「プログラマー」というよりは、「(ゲーム機の)ROMカセット」と言う方がより正しい。この例えでヒュムノスというプログラミング言語を説明すると、謳っている最中の歌い手の「想い(導体H波)」とは、バスを経由しCPUなどのコントローラーへ流れる電気信号そのもの、という定義になる。
レーヴァテイルとは、ゲーム機のカセットであり、塔自体がゲーム機本体というのが一番分かりやすい例えではないだろうか。(もっと厳密に話せば、レーヴァテイルはメディア(メモリーカードやHDD、DVD-RAMなど)である)
ヒュムネクリスタル | プログラム | ソフトウェア |
レーヴァテイル | SDカード、DVD-RAMや書き換え可能なゲームカセット等 | ハードウェア |
アルトネリコ(塔) | PCやゲーム機本体 | ハードウェア |
波動科学に戻すと、導体H波がプログラムによって法則性を持って送り出される電気信号で、導体D波が実行された結果(画面表示など)となる。
導体H波の力関係
ヒュムノス・ワードの場合、導体H波はレーヴァテイルが任意に送信するものであり、塔(サーバー)から要求されるものではない。レーヴァテイルは、自分自身の意識と無意識で、導体H波の流量(=想いの力)を制御する。それが許されるのは、ヒュムノス・ワードがレーヴァテイル自身の責任においてのみ発動する詩だからである。しかし、ヒュムノス・エクストラクトともなると、それでは収まらない。
ヒュムノス・エクストラクトは「他人の想い」であり、自分自身の裁量では必要な導体H波流量を決められない。例えば「EXEC_HYMME_LIFE=W:R:S/.(ワード)」をオリカが謳う場合、それを紡ぎ出したのがオリカである故、必要導体H波流量とスペクトルもオリカの裁量で無意識に決定している。しかし「EXEC_LINCA/.(エクストラクト)」をオリカが謳う場合、他人の決めた仕様を謳うのであるから、当然導体H波流量とスペクトルは自分では決められない。そこでは、オリカがどれくらいのキャパを持っているかなどは関係ない。ヒュムノス・エクストラクトはただ無情に、記録された仕様通りの流量とスペクトルを要求するだけなのである。
ここに悲劇が発生する。すなわち、レーヴァテイルがヒュムノス・エクストラクトに喰われるという事が発生するのである。第一紀において、その問題は殆どなかった。なぜなら、「オリジン」がずば抜けたパワーを持つ以外は、「β純血種」が全員均一のパワーを持つだけだったからである。すなわち、ヒュムノス・エクストラクトの格付けは「オリジン専用」と「汎用」の2種で十分だったのだ(厳密には、第二紀ソル・シエールで開発されたβ純血種は、オリジンに近いスペックを持っている)。しかし、第三世代が入ってきて、その単純さは失われる。第三世代は個体差がある。MAXでベータ純血種を超え、ミニマムでは何も謳えない。その為、第三世代がヒュムノス・エクストラクトを謳う場合、能力の低い第三世代はその場で死んでしまうこともある。
不幸中の幸いなのは、第三世代がヒュムネコードを持っておらず、ヒュムノス・エクストラクトをダウンロード出来ないという点である。それによって、ゲームの時期「第三紀」では、ヒュムノス・エクストラクトを謳ったことのある第三世代は皆無である。
▼参考:数字で見るエクストラクトの仕様詩名称 | 要求流量 | 要求スペクトル平均 | 備考 |
EXEC_PAJA/. | 2,800 SHmag/s | 2.4× 105Hz |
|
EXEC_LINCA/. | 15,400 SHmag/s | 9.14× 105Hz |
|
EXEC_ CHRONICLE=KEY/. |
300 SHmag/s | 6.1× 106Hz |
|
EXEC_HARMONIUS/. | 6,400 SHmag/s | 3.8× 108Hz |
|
EXEC_SUSPEND/. | 198,000 SHmag/s | 9.8× 105Hz |
オリジン専用の流量 |
EXEC_RE=NATION/. | 32,800 SHmag/s | 1.19× 106Hz |
|
EXEC_ PHANTASMAGORIA/. |
7,600 SHmag/s | 3.31× 1010Hz |
人間の限界値間近の周波数 |
EXEC_METAFALICA/. | 13,122,800 SHmag/s | 2.98× 1018Hz |
人間には謳えない周波数と流量 |
I.P.D.とは何なのか?
メタファルス地域特有のI.P.D.といわれるレーヴァテイル、そしてその母体(サーバー)であるインフェル・ピラについてです。なぜメタファルスの人々はI.P.D.を開発する必要があったのか、ここではそれを解説していきます。
レーヴァテイルの基礎知識
前提知識
善悪論を語るつもりはない。ただこの世界に於いては、「生存、維持」に繋がる想いは高周波であり「消滅、破壊」に繋がる想いは低周波であるというただそれだけである。
「生存、維持」とは人間的なそして詩的な言い方をすれば「愛」である。
ここで言う愛とは恋愛の愛ではなく、無償の愛、人類愛といった、地球文化で言えば仏教の「悟り」に近い意味の「愛」だ(仏教でも「不可思議」などの数え切れない程の桁に、本当の愛を据えている)。
人間にかかわらず、石ころから宇宙そのものに至るまで、この世界は「波動」によって構成されている。
ご周知の通り、波動を表す指標は波動のエネルギー形態、振幅周波数、方向のみ。その中でも「周波数」という軸は、この世界の形成に最も深く関わる軸だ。
人間は「D波」「H波」を主成分とする、7種類の波動エネルギーによって構成されている。
第一紀の人達は、物理的なボディを構成する主成分が「D波」、精神的な心を構成する主成分が「H波」であるという所まで突き止めた。そしてその周波数帯域が、人間の場合20Hz~5.28×1011であることも突き止めた。
即ち、人間は5.28×1011までの周波数のエネルギーを放出しているということであり、逆を言うと、これ以上の周波数を放出できないという事だ。
最初の一文に戻れば、人間の「生存」、すなわち「愛」への対応は、どんなに真摯に愛を追及しても、悟りを開いていたとしても、5.28×1011を越えることはない、という事になる。
蛇足になるが、惑星、つまり地球やこの世界の惑星「アルシエル」はどれ程の波動で構成されているのだろうか。答えは5Hz~7.41×1024までの周波数の、22種類の波動エネルギーによって構成されている。惑星アルシエルで進化をたどり、生まれた人間は、この惑星アルシエルによって生み出された生命であり、それは惑星アルシエルの22種類ある波動のうちから7種類を使い創られた生命なのだ。また、自らの命の中に生み出される新たな命は、自らの命の持つ波動成分より遥かに欠落したものとなる。
例えば人間の中に生まれる病原体やガン細胞、腫瘍などは50Hz~1.0×107程度だ。そして、低い周波数帯の波動エネルギーは、高い周波数を引き下げ、結果としてその上位にある生命体を死に追いやる。
愛の力は1.16×108
さて、話は変わって人間の精神周波数帯(H波)の話。人間は誰でも、瞬間的にH波を極限まで高めることが可能だ。
それは例えば、自分にとって大切な人が危機に陥っているとき、愛する人と抱き合う瞬間、ただ純粋に相手のことを想って行動するときその人のH波周波数のスペクトルはかなり高周波に偏る。
具体例を挙げてみる。愛する人が崖から落ちそうになってその手を必死で掴もうと自分の身の危険を顧みずに身体を投げ出す瞬間、その人のH波周波数は1.16×108Hzの帯域がMAXフリキレになっている。
そして、それよりも高周波にも、若干の力を測定できる。この「想いの力」は詩魔法の力に非常に似ており、それ故「奇跡」が発生する。
人間が顕在意識で愛を発するとき、この1.16×108Hzが最高と言われている。それを裏付けたのが、コスモスフィアとダイブだった。
レーヴァテイルへのダイブと、レーヴァテイル自身の成長(=パラダイムシフト)の関係は設定資料集をご参照していただくとして、人間は1.16×108Hzを越えるパラダイムシフトを発生させることが出来ないのである。
そしてそこが、コスモスフィアレベル9といわれる辺りになる。レーヴァテイルにとっても、ここが終端になっている。
それは、ここの少し上にあるわずかな幅の周波数帯域は「不変領域」といわれており、常に一定の値を示す(=個のアイデンティティを司る)領域であることが裏付けている。即ち、顕在意識は1.16×108で終わるのである。
一般的なレーヴァテイル
第一紀に開発されたレーヴァテイルである「オリジン」「β純血種」、そしてその純粋な遺伝である「第三世代」は皆、この法則に基づいている。即ち、精神周波数は2.0×104~1.16×108(レベル9)となっている。
I.P.D. -Infel Phira Dependency-
I.P.D.は「インフェル・ピラ依存体」と言われる、第二紀にメタファルスで開発されたオリジナルのレーヴァテイルである。ただし、それは第一紀のように無から創りだしたものではなく、第三世代のレーヴァテイルをベースに改変したものだ。
I.P.D.の最大の特徴は、塔「アルトネリコ」の世話になっていない、ということだろう。 オリジンから第三世代の全てのレーヴァテイルは塔「アルトネリコ」の中に自分の精神体がある。 「レーヴァテイルは、アルトネリコという巨大なサーバーに接続している」と考えれば概ね間違ってはいない。ところが、I.P.D.はこの「アルトネリコ」というサーバーには繋がっていない。どこに繋がっているのかといえば「インフェル・ピラ」にである。
インフェル・ピラ
インフェル・ピラは、塔「アルトネリコ」とはニアイコールである。完全に同一ではない。以下のような違いがある。
- アルトネリコの1/1000の力しかない。
- 専用のヒュムノス語「新約パスタリエ」を使う。他のヒュムノス語はエミュレートされる。
- 制御詩「ヒュムノス・エクストラクト」を誰もがダウンロードできる。
- レーヴァテイルの意識モードが三種類ある。
- 共通意識野を浅く創られている。
1は単純に、同時処理能力の差。インフェル・ピラは、同時に一万件の詩魔法を処理するが、アルトネリコは、同時に一千万件の詩魔法を処理する。
2に関して。「新約パスタリエ」はインフェル・ピラの為に開発されたヒュムノス語。原型は、現行ヒュムノス語でも特に力の強かった「古メタファルス律」。その力をそのままに更に最適化され、短縮された言語が「新約パスタリエ」である。それ故、概ね現行ヒュムノスの3倍のスピードで、同等の力を発揮する詩魔法を発動可能となっている。
3は、ヒュムノス・エクストラクトのダウンロード方式の違いによる。「アルトネリコ」サーバーでは「ヒュムネコード」がID代わりになっていたため、ヒュムネコードがない第三世代はダウンロードできない。しかしI.P.D.は、「ポテンシャルオミット」というシステムを採用しているため、「資格がある人」ならば誰でもダウンロードできる。「資格」とは、そのI.P.D.の能力の事である。(ゲーム中では「I.P.D.汚染レベル」と表現されている)
4は、意識モードについて。I.P.D.は、詩魔法を謳う際に、「サーレ」「レプレキア」「トルネキア(メタファリカ)」「メッセラ」「トルカロル」「ディーネルマイテ」の6つのモードを持つ。アルトネリコには、インフェル・ピラでいう「サーレ」のモードしかない。
5について。これが今回の話で最も重要なことである。I.P.D.レーヴァテイルの精神階層は、やや浅く創られている。周波数帯域でいえば2.0×104Hz~5.4×107Hzしかない。それより上、5.4×107Hz~1.16×108Hzまでは、特殊な領域としてリザーブされている。この領域を「エンハンスド・スポット(E-SPOT)」という。このE-SPOTこそが、I.P.D.の意識モードシフトを可能にする理由である。
エンハンスド・スポット
CSレベルで言えば8~9に当たる部分の事。I.P.D.は基本的にレベル7で完了する。そして、一般的なレーヴァテイルに存在する「いのちの塔」の扉とは別の「扉」がレベル7のみに存在する。その「扉」こそが、レベル7と8を隔てる「扉」なのである。何故扉が付いているのかと言えば、I.P.D.はレベル8以降は共通意識野として設計されている為である。即ち「エンハンスド・スポット」とは、意図的に設計された共通意識野のことを指す。ところがこれだけの大々的な改造をしておきながら、このエンハンスド・スポットは3313年に一度使われたきり、3772年まで一度も使われていない。その理由はエンハンスド・スポットが「モード・メタファリカ」でしか使われない事にある。
モード・メタファリカ
そしてメタファルス文明がわざわざI.P.D.を開発した理由が、これである。モード・メタファリカ。インフェル・ピラのモードシフトの一つであり、別名「大陸意識」と呼ぶ。そしてI.P.D.に同じような別名を付けるなら、こう呼ぶのが妥当だろう。
『大地を紡ぐレーヴァテイル』
I.P.D.は大地を紡ぐ為に開発された。その方法は、モード・メタファリカの状態で全てのI.P.D.が想いを一つにして謳うことである。モード・メタファリカで使われる「エンハンスド・スポット」はI.P.D.の人数分だけ「ゾーン」が広がる。そしてその「ゾーン」のキャパシティを持った一人のレーヴァテイルとして認識される。
簡単に言えば、1000人のI.P.D.が存在する場合、全員が心を合わせて謳うことで、1000倍の想いを持った一人のI.P.D.がこの世界に誕生するのである。それは、詩を重ねて増幅するだけの「モード・レプレキア」とは桁違いのパワーを持つ。その理由、そして「レプレキア」ではなく「メタファリカ」である必要性は何なのか?
SHWエンハンスド効果
先にも述べたように、人間やレーヴァテイルの想いの波動は5.28×1011Hzまでである。そして原則として、自らの周波数帯域よりも高周波のものを生み出す事は出来ない。大地すなわち「惑星の一部」を生むためには5.28×1011Hzを越える必要がある。もちろん、それ以下でもパワーさえあれば大地は紡げる。現にフレリアは塔を紡いでいる。しかし、塔を見てもわかるように、それは決して「緑の大地」ではない。無機物の塊なのだ。
動植物、水の循環サイクル、天候、雷、食物連鎖、これらが全て揃っている自然のサイクル。これらを生み出す為には5.28×1011Hzでは全然足りない。そこで登場するのが「エンハンスド・スポット」と「モード・メタファリカ」である。
人の想いは楽器の音色と非常に近い特性を持っている。具体的に例えれば、双方とも「倍音」を構成する。
楽器は、例えば440Hzの音を発しているピアノの音色は、実は880Hz、1760Hzといった、倍々に跳ね上がっていく周波数の音も持っている。それが音色を形成するのである。想いも同じで、3.0×105Hzの周波数を持つ思いは、それを倍々にした周波数帯にも、微々たるものではあれ力を出力している。これが、多いものであれば10周回上まで存在している。ただ、この「想いの倍音」は非常に弱く、特に減衰著しい超高周波においては殆ど無に等しい。だが、その想いが100人分集まればどうだろうか。超高周波帯域でも100倍に達し、通常のレーヴァテイル一人が顕在意識の周波数帯で作用を起こすレベルの振幅(=力)に近づけることが可能である。この、一人で謳っているときには計測される事すらない倍音成分が、巨大な想いとなったときに各周波数帯に出現させるゴースト現象を「SHWエンハンスド効果」という。この効果が発生すると、高域側に広がった周波数は5.28×10^11Hzを越えられる。そしてその越える量と周波数は、人数が多いほど増大する。
ただ声を重ね合わせるだけの「レプレキア」は、このエンハンスド効果が発生しない。それは、レプレキアが導体H波の状態ではなく導体D波の状態で結合させるため、既にその成分が意味を成さない世界でのプロセスとなっているためである。厳密な言い方をすると、「DHWエンハンスド効果」というものは無い、という事になる。謳った詩(DHW)レベルではなく、想い(SHW)レベルでないと無理なのである。
METAFALICAという詩
EXEC_METAFALICA/.
メタファリカの欠陥
アルトネリコを制御する詩言語の中でも、最も強力な言語と言われる「古メタファルス律」。その古メタファルス律の集大成とも言われている詩が「EXEC_METAFALICA/.」である。
EXEC_METAFALICA/.は、3060年にジャザによって創られた。その大元となった理論は、彼女がソル・マルタに滞在したときに、フレリアの詩とそれに対する各種構造物(DV/CVなど)の動きの関連性などを徹底的に分析した結果の産物である。
設計というのは力の有無とは関係無しに出来てしまう。そして、レーヴァテイルがその詩を運用するキャパシティが有るか無いか関係なしに、ダウンロードできてしまう。
ジャザは理論値における、レーヴァテイルが放出しなければならない導体H波流量とスペクトル平均周波数を計算していた。そして、いわゆる普通の人間(レーヴァテイル)では無理、という形で落ち着いてしまった。
詩名称 | 要求流量 | 要求スペクトル平均 | 備考 |
EXEC_ PHANTASMAGORIA/. |
7,600 SHmag/s | 3.31× 1010Hz |
人間の限界値間近の周波数 |
(人間の限界値) | 約40,000 SHmag/s | 5.28× 1011Hz |
人間の限界値 |
EXEC_ METAFALICA/. |
13,122,800 SHmag/s | 2.98× 1018Hz |
人間には謳えない周波数と流量 |
ジャザの理論によるメタファリカは、人間はおろかオリジンですら不可能な値をはじき出した。ジャザは頭を抱え、この詩を封印し人々には「失敗」と公表した。
当時、現在のインフェル・ピラの「モード・レプレキア」に相当する理論は既に存在していた。
すなわちレーヴァテイルが1000人集まって謳えば、最大で理論値40,000,000 SHmag/s相当の力となり、メタファリカの要求量13,122,800 SHmag/sを越えられた。
しかし、周波数スペクトル平均は5.28x1011Hzを越えることは不可能だった。それは人間が人間たる所以の部分であり、5.28x1011Hzを越えられないから人間なのである。
すなわち、大陸を生むには人間ではレベルが低すぎ、最低でも大陸以上の意志が必要だった。
大地の心臓
メタファリカによって創られる「純粋な詩による産物の大地」はβ純血種以上の「純粋な詩による産物の人間」と同じ理屈でこの世に存在維持する。
β純血種以上のレーヴァテイルには、人間の「心臓+脳幹」の役割を持つ「中核三角環」が存在する。
それと同様に、魔法で生成される大地にも、中核三角環の巨大版(高レベル版)が生成される。それをジャザは大地の心臓と名付けた。
大地の心臓は、理論値では数万ストン(数百km)ほどの大陸を構成し続ける中核三角環で、最高で1.0×1020Hzまでのスペクトルを持つ事が可能。しかし、それは「最後まで構築できた(謳いきった)場合は」である。途中で謳い手の定常H波が0になってしまった場合(=死んだ場合)は、そこまでのスペックになる。
謳い手はどうなるのか
人の限界を超えたEXEC_METAFALICA/.という詩は、謳うとどうなるのか。
まず一つ目は生命力(定常H波)を根こそぎ奪われ、さらにそれでも足りない場合、詩魔法による生産が停止される。
それをクリアした場合でも、大陸の核となる「大地の心臓」として意志を奪われる(厳密には変革させられる)事になる。
METHOD_METAFALICA/.
EXEC_METAFALICA/.のパッチとも言えるMETHOD版
METHOD_METAFALICA/.はEXEC_METAFALICA/.における欠陥を補う形でインフェルがプログラムした詩である。
METHOD_METAFALICA/.には、次のような機能がある。
- 複数のI.P.D.の想いを束にして、仮想的な一人の個体を創る
- EXEC_METAFALICA/.に定常H波を送るため、アルトネリコとシェアリングする
- インフェル・ピラを大地の心臓として機能させる
すなわち、EXEC_METAFALICA/.が必要とする、「人間のキャパを遥かに超えた導力要求」に応えられる、仮想的な生命を創る詩なのである。
METHOD_METAFALICA/.のプロセス
この詩を謳うレーヴァテイルは例えるなら「指揮者」であり、自分では演奏したり詩を謳ったりしない。
そして、この詩がしっかりとした効果を出すためには、沢山のI.P.D.レーヴァテイルが必要である。その沢山のI.P.D.レーヴァテイルが謳うことで、仮想的な一人の強力が生命体が完成する。
その中で、METHOD_METAFALICA/.という詩自体の役割は、非常にシンプルである。その役割は、I.P.D.のコスモスフィアレベル7と8の間にある「I.P.D.境界門」を開くこと。I.P.D.のコスモスフィアレベル8~9は「Eスポット」と言われており、通常は使われていない。METHOD_METAFALICA/.を謳い「モード・メタファリカ」になったとき、初めてこの「Eスポット」は使用される。
Eスポットは全I.P.D.レーヴァテイルの意識が完全に繋がっている。では、何故このEスポットが、普段はI.P.D.境界門によって閉ざされているのか。もし人間(=レーヴァテイル)に隠し事や知られて恥ずかしい事が何も無く、誰とでも全ての心の内をさらけ出して接することが出来たなら、このI.P.D.境界門は必要ないだろう。人間(=レーヴァテイル)の個体には「プライバシー」がある。I.P.D.境界門は、普段の生活において、「プライバシー」を護るために存在している。
オリジン、β純血種、第三世代などのアルトネリコベースのレーヴァテイルとの一番の違いは、この「Eスポット」である。このEスポットがある為、I.P.D.はレベル8~9相当の、強力な詩魔法を紡ぐことが出来なくなっている。では、何故そこまでして「Eスポット」は必要だったのか。
Eスポットの意味
上の図を見れば分かるとおり、Eスポットは「詩魔法詠唱可能範囲」に入っている。Eスポットに当たるレベル8~9といえば、オリカで言えば「クリニクル」や「アルトネリコ」といった詩魔法が発動されるレベルである。第三世代は、レベル8でも9でも、一人のレーヴァテイルとしてしか謳うことが出来ない。
しかし、I.P.D.レーヴァテイルの場合、レベル8~9に相当する詩魔法は、全てのI.P.D.とシェアリングして謳える。すなわち、I.P.D.レーヴァテイルにとって、レベル8~9の詩魔法とは集団詠唱魔法であり、結果的にはレベル7までの詩魔法とは、桁が3つ4つ違う威力を発揮するモノなのである。
これらのシェアリングを行い「SHWエンハンスド効果」理論を用いると、400人ほどのI.P.D.が謳えば、EXEC_METAFALICA/.が要求する13,122,800 SHmag/sの導力流量、2.98x10^18Hzのスペクトル平均を出すことが可能なのである。
欠点
謳い手であるI.P.D.の「想い」がレベル8~9に満たない場合、この「モード・メタファリカ」は何ももたらさない。I.P.D.レーヴァテイルそれぞれは、別の意志を持ち、別の考え方で謳う。それゆえ、レベル8~9相当の「想い」を持つ詩を謳うかどうかは、個々のI.P.D.レーヴァテイルそれぞれにかかっている。例えば10人中3人しかレベル8の意識を越えていなければ、10人で謳っても3倍の力しか得られない。そして、レベル8~9の「想い」とは相当な想いであり、日常的にホイホイ出てくるようなものではないのである。
METHOD_METAFALICA/.を謳った3313年の時は、まさにこの問題が発生し、メタファリカは実現できなかった。謳うレーヴァテイルそれぞれの「想い」が余りにも弱すぎたのだ。
単体で謳うときの効果
そもそも設計が「パッチ」目的なので、単体で謳うときの効果は無いに等しいが、副産物はある。それは、「I.P.D.レーヴァテイル同士の心の内がさらけ出される」ことである。これは諸刃の剣ではあるが、大衆に意志や想いを伝えるには手っ取り早い。
ゲーム中にクローシェは、この効果を使った事でI.P.D.達の士気をぐっと高め、逆にインフェルは、この効果を使ったことでI.P.D.達の士気をぐっと下げてしまった。その理由は言わずもがな「普段の民衆に対する想い」の違いである。
EXEC_with.METHOD_METAFALICA/.
詩の仕様
METHOD_METAFALICA/.はインフェルによって開発され、それは芸術的なまでにEXEC_METAFALICA/.に絡むように創られている。
具体的には以下のようなプロセスを踏み、お互いにリンクし効果を発揮する。
プロセス | 意味・効果 | 歌詞冒頭 | 主体 |
イニシャライズ | これから世界を揺るがす大変な詩を謳うことを知らせる。 | 天に満てよ | EXECのみ |
プロトコル交換 | プロトコル交換とは、簡単に言えばルカ・クローシェの意識を合体させる儀式。EXECとMETHODをチェインする。 ここだけ、METHOD側が「新約パスタリエ」ではないヒュムノス言語を使う。 プロトコル交換は、EXECとMETHODが交互に単語を謳っていくことで行われる。 |
幽けき深淵の底 | EXEC/METHODの交互 |
想いの集積と導力転送 | 大地の心臓を創るために、民衆の想いを集積する。主にMETHOD側がリードする形になる。 | 愛しき大地 | METHODのみ |
メタファリカ生成開始合図 | メタファリカの始まりを告げる | Waath! | - |
インフェル・ピラのデフラグメント | インフェル・ピラが大地の心臓になるための領域を創る。 その為、現在生存しているI.P.D.のコスモスフィア以外の領域、バックアップなどは全て初期化されメモリの再マッピングが行われる。 |
謳は胸を溢れて | METHODのみ |
大地の心臓の形成 | EXEC側が、METHODから享受した力(=インフェル・ピラ)を使い、大地の心臓を形成する。 | 目眩き蒼穹の欠片 | EXEC/METHODの合唱 |
大地の創成 | EXEC側が主体となり、大地の心臓を中心とした大地を形成し始める。 | Was yea ra wael | EXEC/METHODの合唱、民衆の詩 |
デフラグメント
インフェル・ピラには、普段未使用領域がとても多い。
しかしこれは「大地の心臓」用のリザーブであり、本来の目的に沿った必須の未使用領域である。これを普段遊ばせておくのは勿体ないので、通常バックアップに使ったり、スワップエリアになっていたりする(クローシェの謳うMETHOD_IMPLANTA/.は、このオマケ機能の恩恵である)。この領域が使われるのは、EXEC_with.METHOD_METAFALICA/.を謳ったときのみである。METHOD_METAFALICA/.のみでは使われない。
この合体メタファリカの詩になったとき、EXEC側が創り出す「想い」を格納する媒体として、METHOD側がインフェル・ピラに「大地の心臓」創造領域を創る(人間のコスモスフィアでは無理なので)。この時に、本来「大地の心臓」用であるリザーブ領域がクリンナップされるのである。更にそれに留まらず、メモリ領域を最適化整理するために、全I.P.D.レーヴァテイルのメモリマップアドレスも移動される。その時、生存している(肉体をもった)I.P.D.レーヴァテイルのコスモスフィア情報以外は、全て消去される仕様になっている。
生成後の大地の心臓の特性
大地の心臓は、最高で2.98×1018HzまでのFFTスペクトラムを保有できる、高度な中核三角環である。(レーヴァテイルの中核三角環が保有できるFFTスペクトラムは5.28×1011Hzまで)。それにより、人間よりも高度な生命体である「惑星」までの生命体を形成する事が出来る。また大地の心臓は、外見は同じでも、中に保有するFFTスペクトラムは必ずしも一定のバンドレンジを持っているとは限らない。例えば、ヒロインのH波単体が構成した大地の心臓と、EXEC_with.METHOD_METAFALICA/.が構成した大地の心臓では、極端にそのレンジに差が生じる。
名称 | 中核三角環 | 四次正角性中核環 | 惑星アルシエル |
俗称 | レーヴァテイル核 | 大地の核 | 惑星の核 |
キャパシティ | 5.28×1011Hz | 2.98×1018Hz | 1.0×1020Hz |
外的影響力 | 弱い | 中規模 | 強い |
ヒロイン単体で構成した大地の心臓は、いわゆる中核三角環と同レベルの存在である。
故に人が抱える葛藤や偏見などが反映された大地として生成されてしまう。
しかし、SHWエンハンスド効果を発生させて生成されたメタファリカの大地の心臓は、惑星アルシエルにより近い存在としての大地の心臓になり得るのである。